サッカーU-23日本代表は25日、国際親善試合でU-23ウクライナ代表と対戦し、2-0で勝利を収めた。完敗だったU-23マリ代表戦も含めた2試合でU-23日本代表の得手不得手は明確になったが、パリ五輪アジア最終予選へのテストという意味では参考にならないのかもしれない。(文:西部謙司)

●ウクライナを苦しめた日本らしさ

 3日前はU-23マリ代表に1-3と完敗。力の差をみせつけられた格好だったが、U-23ウクライナ代表戦は逆に2-0の快勝だった。この試合はU-23日本代表らしいプレーが随所に見られた。

 ハードワークによるプレッシングはU-23ウクライナ代表を苦しめていた。後半の田中聡による追加点は、佐藤恵允が失ったボールをすぐさま奪い返したのが起点になっている。前線のハードワークとプレスバック、全体をコンパクトにしての素早い寄せで主導権を握っていた。

 セットプレーから先制点を奪えたのも収穫だ。ニアサイドで関根大輝がヘディングでフリックすると、そのまま反対のポストに当たる。ファーに詰めていた佐藤が顔に当ててゴールした。

 藤田譲瑠チマと松木玖生のコンビは攻守にチームを支え、このチームの心臓部であることを示した。再三際どいシュートを放った荒木遼太郎も存在感があった。

 セットプレーのキッカーとして山田楓喜は質の高いボールを供給。佐藤はアグレッシブなプレーでこのチームに適した個性を発揮している。U-23マリ代表戦では左サイドハーフで先発、U-23ウクライナ代表戦では山田に代わって右でプレーした平河悠もスピード、テクニック、ハードワークのいずれも良く、やはりこのチームに合った選手だ。

 まさに「良い守備からの良い攻撃」のコンセプトどおりの試合ぶり。これでアジア最終予選(AFC U-23アジアカップカタール2024)への期待が高まるだろう。ただ、この試合はさほど参考にならないとも思われる。

●「日本らしい」生命線はA代表と酷似? マリ戦との違いは…

 日本らしいプレーができての快勝だった。3日前からはGKとディフェンスラインを総入れ替え、ボランチの藤田&松木の存在も大きい。ただ、U-23日本代表の戦い方自体はほとんど変わっていない。そして、そのコンセプトはA代表と酷似している。

 A代表とU-23代表のサッカーが似ているのは当然ではあるが、それゆえの不安要素もある。最大の強みはハードワークとプレッシング。守備を決してさぼらない、球際で激しく戦えることがベースになっていて、それが選考の基準にもなっている。奪ってからのショートカウンター狙いなので、1トップには裏抜けが得意なFWが起用される。こうした特徴は森保一監督が率いるA代表そのままと言っていい。

 A代表のカーボンコピーのようなU-23日本代表が今回の連戦で出来に差があったのは、単純に相手の違いによるところが大きい。

 U-23マリ代表はプレッシングを個人技で外すことができた。プレッシングが生命線のU-23日本代表にとって、それを簡単に外されてしまえば大きな問題を抱え込むことになる。逆にU-23ウクライナ代表はパスワークで外そうとしてプレッシングの餌食になった。そうなればU-23日本代表のペースで試合は進む。

 相手によってプレーぶりが左右されるのはA代表と同じだ。A代表は欧州勢相手には非常に好成績をあげているが、南米やアフリカ勢にはそれほど勝率は高くない。はっきりと得手不得手がある。

 問題はアジア予選だ。U-23中国代表、U-23韓国代表、U-23UAE代表と同居したグループは「死のグループ」とも呼ばれているが、U-23マリ代表のように個でプレスを外せるチームはおそらくない。そのかわりにロングボールでプレッシングを回避してくると予想される。アジアカップで日本代表に対してイラク代表、イラン代表が用いた戦法である。

●好都合だったウクライナ。なぜ“あまり参考にならない”のか

 日本代表の最大の強みであるプレッシングをいかに回避するか。イラク代表とイラン代表はAFCアジアカップカタール2023でそのサンプルを提示した。プレスされる前に前線へロングボールを蹴り出し、そのセカンドボールを拾うべくプレスをかける。バウンドするボールの奪い合いでは、日本のパスワークにかわされる心配はあまりない。

 U-23日本代表のプレースタイルは、あまりにも日本代表と似ている。日本代表に効果のあった戦い方はU-23日本代表にも通用すると対戦相手は考えるだろう。

 U-23ウクライナ代表は終始、自陣からビルドアップしようとしていた。後半にGKがじりじりと持ち出しながらロングボールを狙った場面があり、これは有効そうだったがゴールキックのリスタートは最後までショートパスを選択していた。アジア予選でここまでU-23日本代表に好都合なプレーをしてくれる相手はたぶんない。

 U-23マリ代表戦では3失点したが、そのときの高井幸大と西尾隆矢のCBコンビより、無失点に抑えた馬場晴也、鈴木海音のほうがレギュラーポジション獲得に近いかといえば、一概にそうとも言えない。ロングボール対策としては前者のほうが優れているかもしれないからだ。また、スピーディーなプレスよりもセカンドボールの奪い合い、とくにバウンドしたボールをめぐるバトルになることを想定すると、MFの構成もまた変わってかもしれない。

 U-23ウクライナ代表戦は、U-23日本代表らしいプレーをして勝利した。しかし、アジア予選は全く違う性質の試合になることが予想される。日本の長所を発揮しにくい展開になるだろう。その点でU-23ウクライナ代表には快勝したものの、この試合のメンバーが決定版になるとはかぎらず、アジア予選を想定するとあまり参考にならない試合だったかもしれない。

(文:西部謙司)

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